9月15日、MES側とQMS側から同じ方向の発表が出た

2026年9月15日、Siemens Digital Industries SoftwareのOpcenterブログに「Expanded Nonconformance Management for Semiconductor Manufacturing」という短い記事が載りました。中身は、Teamcenter(PLM)とOpcenter(MES群)をつなぐ連携層 Opcenter Connect の機能拡張です。Opcenter側から Teamcenter Quality に作れる品質オブジェクトは、これまで Problem Report、Issue Report、Quality Issue の3種でした。最新のOpcenter Connectリリースで、4つ目として Nonconformance(不適合)が加わります。記事は対象を「Opcenterの全製品」としています。

同じ日、米調査会社 Nucleus Research は「2026 Quality Management System Technology Value Matrix」を公表しました。LeadersにはComplianceQuest、Honeywell Technologies、MasterControl、Octave、Propel、Siemensの6社が並びます。発表文は、つながった品質記録によって供給者・材料・生産・不適合・是正処置・顧客クレームを横断して追跡できることが歩留まり改善やスクラップ削減につながる、と評価の背景を説明しています。

翌16日には、同じブログで半導体MES向けの新モジュール MJAC(Manufacturing Job Automation Controller)が紹介されました。MES・装置自動化プログラム(EAP)・自動搬送システム(AMHS)にまたがる長時間ジョブを1つの枠組みで制御するもので、ZNTとSiemensの共同開発です。3本の発表はどれも、現場の実行系と上位の管理系のあいだにある手作業の継ぎ目を製品で埋める方向を向いています。

Opcenter ConnectがTeamcenter Qualityに作れる品質オブジェクトの数
4種
Siemens Opcenterブログ(2026年9月15日)。従来の3種にNonconformanceが加わった
Nucleus Research QMS Value Matrix 2026のLeaders
6社
Nucleus Research/PR Newswire(2026年9月15日)
Opcenterのコンテナ1つあたりに自動生成される封じ込め処置(containment action)
1件
Siemens Opcenterブログ(2026年9月15日)

8段階モデルに当てはめると、自動化されたのは「境界1」

当サイトのMESとQMSの境界の記事では、不適合が起きてから標準が改訂されるまでを8段階に分け、①検査実施〜③隔離・保留をMES、④NCR起票以降をQMSの仕事と整理しました。MESからQMSへ手が離れる③→④を境界1、QMSで決めた処置を現場で実行する⑤→⑥を境界2と呼んでいます。

Siemensの説明を当てはめると、今回の拡張が埋めたのは主に境界1です。現場の作業者はOpcenterのE-Procedureフォーム(電子化された作業手順の入力画面)から不適合を起票し、それを受けてTeamcenter Quality側に対応するNCレコードが自動で作られます。品質技術者はTeamcenter Qualityの中で、コンテナごとに処置(disposition)を割り当てます。記事の言葉では、作業者と品質技術者がそれぞれの画面で作業しながら「単一の同期されたNCレコード」を保つ、という構成です。

不適合の8段階とOpcenterおよびTeamcenter Qualityの分担を示す図 Opcenter(MES) Teamcenter Quality(QMS) ①検査実施 ②規格判定 ③保留・NC起票 E-Procedureフォーム ⑥処置の実行 連携の詳細は未公表 ④NCレコード 自動生成 ⑤処置決定 コンテナ単位 ⑦原因調査・⑧規格改訂 QMSの従来機能 境界1:転記なしで自動連携 境界2
不適合の8段階のうち、Opcenter Connectの拡張がカバーする範囲。③→④の起票転記は自動化され、⑤の処置はコンテナ単位でQMS側に置かれる。⑥以降の扱いは公開情報からは読み取れない。

一方で、境界2については記事に具体的な記述がありません。QMSで決めた手直しや廃棄の指示がOpcenterの作業指示や現品ステータスにどう反映されるのか、手直し実績がNCレコードへ戻るのかは、公開情報からは判断できません。「双方向の品質ワークフロー」という表現はありますが、どのデータが逆向きに流れるかまでは書かれていないため、検討時には実機デモで⑥の往復を確認する必要があります。

コンテナ単位の処置は半導体のロット分割を前提にしている

今回の機能が「半導体向け」と題されているのは、処置の単位にあります。Opcenterのコンテナは、ロットやウェハーキャリアのように現品を束ねる単位です。不適合1件に対して、コンテナ1つごとに封じ込め処置が1件ずつ自動で作られ、品質技術者はコンテナごとに異なる処置を割り当てられます。

ウェハー工程では、同じ不適合に関わるロットでも、測定結果によってあるコンテナは再処理、別のコンテナは廃棄、残りは条件付きで次工程へ、と分かれることが珍しくありません。不適合1件に処置1件しか持てない設計だと、NCRを分割して起票し直すか、処置の内訳を備考欄に書くことになり、後からどのコンテナがどう扱われたかを機械的に追えなくなります。半導体製造のMESでロットの分割・併合が日常的に起きることを考えると、処置を最初からコンテナに紐づける設計は理にかなっています。

記事は対象業種として半導体のほかに医療機器と電子機器の製造を挙げています。どちらもロットやシリアル単位で処置を記録し、監査で説明を求められる業種です。

QMS評価とMES評価を重ねると、ベンダーの組み方が見える

Nucleus Researchは2026年8月11日にMESのValue Matrixも公開しており、内容はNucleus Research 2026年版の記事で紹介しました。今回のQMS版と重ねると、MESとQMSの両方で評価対象になっている会社が5社あります。

ベンダーMES Value Matrix 2026(8月11日)QMS Value Matrix 2026(9月15日)
SiemensLeadersLeaders
Honeywell TechnologiesLeadersLeaders
Rockwell AutomationLeadersExperts
Dassault SystèmesExpertsExperts
PTC対象外Experts

両方でLeadersに入ったのはSiemensとHoneywellの2社です。ただしNucleusの4分類は機能の深さと使いやすさの組み合わせによる類型で、順位ではありません。また、同じベンダーがMESとQMSの両方を持っていても、両製品が今回のSiemensのように不適合レコードを同期できるとは限りません。製品群がそろっていることと、境界1・境界2のデータが流れることは別の問題です。

QMS側の評価でもう1つ目を引くのは、AIの扱いです。Nucleusの発表文は、ベンダーが調査の要約や根本原因分析、複数手順のワークフローにAIを適用している一方で、買い手は権限・承認・監査可能性・データの来歴を以前より重視していると書いています。不適合レコードがMESとQMSをまたいで同期されるようになると、AIが要約や分析に使う元データも両システムにまたがります。どちらの記録を正とするかを決めておくことは、AI活用の前提条件にもなります(推測)。

自社の構成に当てはめて確認すること

Siemensの組み合わせを使っていない工場にとっても、今回の発表は自社の連携を点検する材料になります。製品の機能表に「QMS連携あり」と書かれていても、その中身が③→④の起票転記だけなのか、⑤の処置がコンテナやロットの単位で持てるのか、⑥の実績が戻るのかで、現場の手間は大きく変わります。

なお、MJACのような半導体工場向けの自動化モジュールと今回の不適合連携が、同じ現場でどう組み合わさるのか(たとえば自動搬送中のロットに不適合が付いたときにジョブが止まるのか)は、9月16日の記事にも言及がありません。Siemens Opcenterを検討中の半導体工場であれば、この組み合わせ動作も確認項目に加えてください。

Opcenter Connectとは何ですか

SiemensのPLMであるTeamcenterと、MES群であるOpcenterの各製品をつなぐ連携層です。今回の拡張では、Opcenter側からTeamcenter Qualityに作成できる品質オブジェクトに、Problem Report、Issue Report、Quality Issueに続く4つ目としてNonconformanceが加わりました。

半導体以外のOpcenter製品でも使えますか

Siemensの記事は、拡張機能を「Opcenterの全製品で利用可能」と説明しており、対象業種として半導体のほか医療機器と電子機器を挙げています。ただし対応バージョンやリリース番号は記事に書かれていないため、具体的な適用可否は製品ごとのリリースノートで確認する必要があります。

QMSを別製品で持つ場合、この連携は使えますか

今回の機能はOpcenterとTeamcenter Qualityの組み合わせを前提にしています。他社QMSと組み合わせる場合は、APIや連携基盤を使って同等の起票・処置の往復を自前で作ることになります。その際も、処置の単位と所有権の移管ルールを先に決めておく点は変わりません。

この記事に出てくる用語

MES用語集(日・英・中)をすべて見る

この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス MESソリューション部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。