2026年8月11日、21社が4つの分類に置かれた
Nucleus Researchは2026年8月11日、「Manufacturing Execution System Technology Value Matrix 2026」を公開しました。同日にPR Newswire経由でプレスリリースが配信されています。掲載されたベンダーは21社で、内訳は次のとおりです。
| 分類 | 社数 | ベンダー |
|---|---|---|
| Leaders | 6 | Eyelit Technologies/Honeywell Technologies/Infor/Parsec Automation/Rockwell Automation/Siemens |
| Experts | 6 | Applied Materials/Critical Manufacturing/Dassault Systèmes/iTAC/Körber/Velotic |
| Accelerators | 5 | 42Q/Apprentice.io/AVEVA/Sepasoft/Tulip |
| Core Providers | 4 | Aegis Software/AspenTech/MASS Group/SAP |
リリースでは、MES投資の主な動機として生産性向上、品質管理、トレーサビリティ、ダウンタイム削減が挙げられ、AI活用の拡大にも触れられています。同社シニアアナリストのCharles Brennan氏は、製造業者が実行改善を事業の数字で示す証拠を求めていること、そして最も強いリターンは工場データをスループット・労働力利用率・納期パフォーマンスの測定可能な利益へ変換できるプラットフォームから生まれる、という趣旨のコメントを出しています。
軸は「機能性 × 使いやすさ」で、Gartnerの象限とは別物
Value Matrixの軸は、同社の解説資料「Understanding the Value Matrix」に定義があります。横軸が機能性(functionality)、縦軸が使いやすさ(usability)です。スコアの根拠はNucleusのアナリストがエンドユーザーに対して行ったインタビューであると同資料に明記されています。
4つの象限の定義は次のように整理できます。
- Leaders:機能性と使いやすさの双方が高く、包括的な製品群と大規模導入を支えるリソースを持つ
- Experts:深い機能に投資しているが、その分だけ複雑で追加の教育を要する。業種別の高度な機能を提供する
- Accelerators:特定の領域に向けて導入が速く、直感的なUIで限られた教育でも定着する(同社の解説資料では Facilitators という名称で説明されています)
- Core Providers:ポイントソリューションまたは限定機能を低コストで提供する
Leaders 6社の顔ぶれは、日本語圏の知名度と一致しない
この分類でまず目につくのは、日本のMES選定でほとんど名前が挙がらないベンダーがLeadersに入っていることです。Eyelit Technologies、Parsec Automation、Inforの3社は、日本語の情報がきわめて少ない一方で、北米の中堅製造業では導入実績を積んでいます。
逆に、日本でMESの大型案件に頻繁に登場するDassault Systèmes(DELMIA Apriso)はExpertsに置かれています。Expertsの定義は「深い機能に投資しており、その分だけ複雑で追加の教育を要する」であり、能力が低いという意味ではありません。グローバルテンプレートを多拠点へ展開するような使い方では機能の深さがそのまま価値になり、逆に単一工場へ短期間で入れたい場合には教育コストが重く出ます。この評価は、弊社が実装の現場で見ている傾向とも大きくは矛盾しません。
ExpertsにVeloticが入っている点も記録しておく価値があります。同社は2026年3月にGE VernovaからTPGへ売却されたProficy事業を母体として発足した会社で、発足から5カ月で評価対象に載ったことになります。
GartnerのMarket Guide化と並べて読む
MESの第三者評価は、この3年で形が変わりました。Gartnerは2023年4月版を最後にMESのMagic Quadrantを発行しておらず、2025年・2026年はMarket Guide形式でRepresentative Vendorを列挙するにとどめています(詳細は「Gartnerのマジック・クアドラントでリーダー」は、MESではもう成立しない)。象限評価をやめた側と、続けている側が並存しているのが2026年の状態です。
| 観点 | Gartner Market Guide 2026 | Nucleus Value Matrix 2026 |
|---|---|---|
| 形式 | Representative Vendorの列挙(象限なし) | 4象限への配置 |
| 軸 | なし | 機能性 × 使いやすさ |
| 掲載社数 | 列挙形式のため順位の意味はない | 21社 |
| 公表時期 | 2026年3月23日 | 2026年8月11日 |
どちらが正しいという話ではありません。Gartnerが象限をやめた理由は同社が明言していないため断定できませんが、MESという製品カテゴリがAI層・データ層まで含めた構成で比較される時代に入り、単一の象限に収まりにくくなったという見方はできます(ここは推測です)。一方でNucleusは、機能性と使いやすさという導入現場に近い2軸に絞ることで象限を維持しています。
実務としては、どちらのレポートも「候補を広げるために読む」ものであって、「順位を借りるために読む」ものではありません。自社の要件で比較する作業は、どのレポートを読んでも省略できません。要件側から質問を組み立てる手順はベンダーへの質問リストにまとめています。
海外レポートの分類を自社の要件にどう翻訳するか、DELMIA Aprisoの実装経験をもとにご支援します。
よくある質問
Nucleus ResearchのValue Matrixは有料ですか
レポート本体は同社サイトでの提供です。ただし分類結果(どのベンダーがどの象限か)と主要なコメントは、2026年8月11日付のプレスリリースで公開されており、無料で確認できます。本記事の分類一覧もその公開情報にもとづいています。
Leadersに入っていないベンダーは避けるべきですか
いいえ。4象限は優劣の順位ではなく、機能の深さと使いやすさの組み合わせによる類型です。Expertsは「複雑だが深い」、Core Providersは「限定機能を低コストで」という位置づけであり、要件が合致すればそれぞれが最適解になります。自社の要件を先に固め、そのうえで分類を候補探しに使ってください。
日本のベンダーが載っていないのはなぜですか
2026年版の掲載21社に日本のベンダーは含まれていません。理由はレポートに記載がないため断定できませんが、スコアの根拠がエンドユーザーインタビューであることを踏まえると、調査対象が北米・欧州のユーザーに偏っている可能性があります(推測)。国内ベンダーの比較には、このレポートは使えないと考えるのが安全です。
