FIFOでは足りない理由:先入れ先出しは期限を見ていない

多くの工場は「先入れ先出し(FIFO)を徹底しています」と言います。しかしFIFOは入庫日の順序であって、期限の順序ではありません。両者がずれる場面は日常的にあります。後から入庫したロットのほうが期限が短い(購買先の在庫都合)、リテストで期限が更新された、開封により期限が短縮された、こうした場合、FIFOに従うほど期限切れリスクが増えます。

FEFO(First Expiry, First Out:期限の早いものから使う)は、この問題への回答です。ただしFEFOを「倉庫の棚の並べ方」と理解していると、システム設計を誤ります。FEFOの本体は引当ロジックです。製造オーダーに対してどのロットを割り当てるかをシステムが期限順に決め、かつ期限切れ・期限不足のロットは引当も投入もできないという統制が伴って、初めて工程が守られます。

現物の並び順に依存した運用は、人の入れ替わりと繁忙で必ず崩れます。並べ方は補助、判定はシステム、という役割分担が出発点です。

期限は1つではない:3種類を区別する

設計の最初のつまずきは、品目マスタに「有効期限」という欄が1つしかないことです。実務の期限は少なくとも3種類あります。

期限の種類意味起点と計算切れたときの扱い
使用期限(Expiry)これ以降は使ってはならない絶対的な期限製造日+品目ごとの有効期間。メーカー表示があればそれが正使用不可。廃棄または返品
リテスト期限(Retest)再試験で品質を確認すべき期限製造日または前回試験日+リテスト間隔即使用不可ではなく、再試験合格で期限を更新できる
開封後期限(In-use)開封・調製後に短縮される期限開封日時+開封後有効期間。元の使用期限と比べて早いほう使用不可。残量は廃棄

この3つを1つの欄で扱うと、リテスト期限切れのロットを「期限切れ=廃棄」と誤処理したり、開封済み容器が元の期限のまま使われ続けたりします。とくに開封後期限は、開封イベントの記録(誰がいつ開封したか)がなければ計算できないため、投入照合秤量・分注管理の操作の中で開封を記録する設計が前提になります。

もう1つ決めるべきは期限の粒度です。日単位か、時分単位か。調製液の「調製後8時間以内に使用」のような時間単位の期限がある工程では、日付だけの管理では判定できません。時間単位の期限を扱うなら、拠点をまたぐシステムではタイムゾーンの扱いまで仕様に含めてください。

FEFO引当のロジックと、許すべき例外

基本ロジックは単純です。引当対象のロットを「使用可能な状態(合格済・ホールドなし・期限内)」で絞り、期限昇順に並べ、必要量に達するまで割り当てる。設計の実質は、この基本形からの逸脱をどこまで許すかにあります。

残り期限の下限(最低残存期間)。期限内であっても、製造リードタイムより残りが短ければ、完成前に期限が切れます。「引当時点で残り30日以上」のような下限を品目×用途で定義します。輸出品や長期熟成品では、顧客要求の残存期間から逆算する必要があります。

FEFO逆転の許可。端数の消化(期限の遠い開封済み残量を先に使い切りたい)、ロット分割を避けたい(期限順に従うと2ロットまたぎになる)といった理由で、期限順を崩したい場面は正当にあります。逆転を認める条件と、逆転時に記録する理由コードを定義します。無条件で手動変更を許すと、FEFOは事実上消滅します。

期限接近の先回り。期限切れは、切れてから検知しても廃棄するしかありません。「期限N日前に品質部門へ通知し、使用計画または再試験を判断させる」という警告リードタイムを品目ごとに設定します。Nはリテスト手配のリードタイムから逆算します。

ERP・WMS・MESの三者で、期限の「正」をどこに置くか

期限管理が破綻する典型は、ERP・WMS・MESがそれぞれ期限情報を持ち、更新が伝わらないことです。リテスト合格で期限を更新したのに、更新がMESに届かず投入時にブロックされる(またはその逆)という事象は、責任分界の未定義から生まれます。

原則はこう置きます。期限の値を決める(承認する)のは品質部門の業務が動くシステム(LIMSまたはQMS、なければMES)、保管中の引当・払出はWMSまたはERP、工程内での使用可否判定はMES。そして期限の更新イベント(リテスト合格、ホールド解除)は、決めたシステムから他システムへ一方向に配信します。双方向に更新を許すと、どちらが新しいかの判定問題が必ず発生します。倉庫側との詳細な分担はMESとWMSを連携させる設計、ロット状態の全体像は仕掛(WIP)管理で詳しく扱っています。

なお、期限判定の最後の砦は投入時です。引当が正しくても、現場が隣のパレットから取ることはあります。投入照合の判定条件に「期限」を必ず含める、これがこの記事の結論であり、FEFOを倉庫の中だけで完結させない、ということの具体的な意味です。

よくある質問

期限まで管理が必要な材料と、不要な材料をどう区分すればよいですか。

品目マスタに「期限管理対象か」のフラグと、対象の場合の期限種別・有効期間・警告リードタイムを持たせ、受入時に期限の入力(または計算)を必須にするのが基本形です。区分の判断基準は、劣化が品質に影響するか(食品・医薬品原料・接着剤・溶接材料・一部の樹脂など)と、顧客・規制の要求があるかの2点です。迷う品目は対象に倒すべきですが、全品目を対象にすると受入時の入力負荷と例外処理が増えるため、「期限管理しない理由」を品目分類ごとに文書化しておくと監査対応も運用も安定します。

期限切れになったロットは、システム上どう扱うべきですか。

自動で「使用不可」状態に遷移させ、引当・投入・出荷のすべてをブロックするのが原則です。重要なのは、期限切れを在庫の削除や廃棄処理と直結させないことです。期限切れ品には、再試験して復活させる(リテスト期限の場合)、特別採用の判断を仰ぐ、返品する、廃棄するという複数の後続処理があり、判断までの間は「期限切れ・処置待ち」という明示的な状態で在庫に残すべきです。この状態管理はホールド管理と同じ仕組みで実装でき、処置権限を品質部門に限定する点も共通です。

開封後期限まで管理すると、現場の負荷が大きくなりませんか。

開封のたびに記録が1操作増えるのは事実です。負荷を抑える鍵は、開封記録を独立した作業にしないことです。秤量や投入の操作フローの中で、そのロットの初回使用を検知して開封日時を自動記録すれば、現場の追加操作はゼロにできます。明示的な開封操作が必要なのは、使用を伴わない開封(サンプリングのための開封など)に限られます。また、全品目に開封後期限を設定する必要はありません。吸湿性・酸化・微生物リスクのある品目に絞り、それ以外は使用期限のみとするのが現実的です。

この記事を書いた人

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株式会社サオス MESソリューション部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。